こころの晴れ間

離れて暮らす親が過去を否定的に語るようになったら?隠れた心のサインと家族のサポート

Tags: 高齢者メンタルヘルス, 親, 心のサイン, 家族サポート, 相談

遠方の親御さんの言葉、少し気になりませんか?

離れて暮らす親御さんと電話やオンラインで話したり、たまに会ったりする中で、「昔は良かった」「私の人生は失敗だった」といった、過去を否定的に語る言葉が増えたと感じることはありませんか。

もちろん、人生を振り返る中で後悔や反省の念を口にすることは誰にでもあります。しかし、その頻度が増えたり、語調が強くなったり、あるいは自分自身の価値を著しく低く見積もるような発言が目立つようになったりした場合、それは単なる愚痴や後悔ではなく、親御さんの心の状態を示す重要なサインかもしれません。

特に、仕事や家事、育児などで忙しく、頻繁に直接会うのが難しい場合、親御さんの小さな変化に気づくのは容易ではありません。離れていても気づける変化、その背景にある可能性、そして私たち家族ができることについて考えてみましょう。

「過去を否定的に語る」具体的なサインとは

どのような言葉や態度が、心の変化を示すサインとなりうるのでしょうか。以下のような兆候がないか、日々のコミュニケーションの中で注意深く見守ってみてください。

こうしたサインは、表面的な言葉の端々や、声のトーン、表情などにも表れることがあります。電話の声に元気がなかったり、オンラインでの顔色や表情が暗かったりする場合、言葉の内容と合わせて注意が必要です。

なぜ、高齢になると過去を否定的に捉えやすくなるのか

高齢期に「過去を否定的に語る」背景には、いくつかの要因が考えられます。

これらの背景を理解することで、親御さんの言葉の裏にある苦悩に寄り添いやすくなるでしょう。

家族ができること:寄り添い、小さな変化を促す

親御さんの「過去を否定的に語る」サインに気づいたら、家族としてどのように対応すれば良いのでしょうか。

1. まずは「聞く姿勢」を持つ

親御さんのネガティブな言葉を聞くと、励ましたり、否定したりしたくなるかもしれません。「そんなことないよ!立派な人生だったよ!」とすぐに反論したくなる気持ちも分かります。しかし、まずは親御さんがそう感じているという事実を受け止め、「そう感じているのね」と、非難せずに耳を傾ける姿勢が大切です。親御さんは、ただ自分の気持ちを聞いてほしいだけかもしれません。

2. 共感を示し、気持ちを受け止める

「〇〇だったと感じているのですね」「大変だったでしょう」など、親御さんの感情に寄り添う言葉を伝えてみましょう。無理に解決策を提示したり、元気づけようとしたりせず、まずは「私はあなたの話を聞いていますよ」「あなたの気持ちを理解しようとしていますよ」というメッセージを送ることが重要です。

3. 過去の肯定的な側面に光を当てる

会話の中で、無理強いせず、自然な形で親御さんの努力や成し遂げたこと、周囲から感謝された経験などに焦点を当ててみましょう。「お父さん/お母さんが頑張ってくれたおかげで、あの時助かったんだよ」「〇〇の時、本当にすごいと思ったよ」など、具体的なエピソードを交えて伝えると、親御さんも受け止めやすくなります。アルバムを見返したり、昔の話を一緒にしたりするのも良い方法です。

4. 現在の楽しみや興味を共有する

過去の話ばかりになるのを避け、現在の生活に目を向けてもらうよう促しましょう。「最近、〇〇さんは元気?」「テレビでこんな番組やってたけど、面白そうだったよ」「今度、〇〇(親御さんの好きなもの)のイベントがあるみたいだよ」など、親御さんが関心を持ちそうな話題を提供してみてください。現在の小さな楽しみを見つけることが、前向きな気持ちにつながります。

5. 小さな目標や役割を応援する

何か小さなことでも、親御さんが自分でできること、達成感を得られるようなことを見つけるサポートをしましょう。例えば、簡単な家事をお願いしたり、趣味の活動を応援したり、地域活動への参加を促したりするなどです。誰かの役に立っていると感じたり、自分で何かを成し遂げたりする経験は、自己肯定感を高める助けになります。

6. 社会的なつながりをサポートする

友人や親戚との電話や面会、地域の集まりへの参加などを促すことも大切です。家族だけでなく、様々な人との交流は、孤独感を和らげ、新たな視点や楽しみをもたらしてくれます。遠方に住んでいても、オンラインでのビデオ通話を提案したり、近くに住む親族や友人に連絡を取ってもらうようお願いしたりすることも考えられます。

専門家への相談も視野に入れる

親御さんの「過去を否定的に語る」状態が長く続いたり、その頻度が増したりする場合、あるいは以下のような他のサイン(「離れて暮らす親の〇〇に気づいたら」シリーズで紹介したようなサイン)がいくつか同時に見られる場合は、専門家への相談を検討する時期かもしれません。

相談先としては、以下のような機関があります。

親御さん自身が受診を嫌がる場合でも、まずは家族だけで相談に行くことができる機関もあります。抱え込まず、専門家の意見を聞いてみることが、状況を改善させる第一歩となることも多いです。

家族自身の心身の健康も大切に

遠方に住む親御さんのことが心配になると、ご自身の仕事や家庭生活との両立で、心身ともに負担を感じることもあるでしょう。親御さんをサポートするためには、まずご自身が健康でいることが大切です。

完璧を目指さず、できることから始めるという気持ちで取り組みましょう。家族だけで抱え込まず、兄弟姉妹と協力したり、地域の相談機関や利用できるサービスについて情報収集したりすることも重要です。ご自身の感情にも目を向け、必要であれば友人や信頼できる人に話を聞いてもらったり、相談窓口を利用したりすることも考えてみてください。

まとめ

離れて暮らす親御さんが過去を否定的に語るようになるのは、高齢期の様々な変化や喪失、あるいはメンタルヘルスの不調を示すサインである可能性があります。

その言葉を頭ごなしに否定せず、まずは耳を傾け、親御さんの気持ちに寄り添うことが大切です。そして、過去の肯定的な側面や現在の小さな楽しみに光を当てるような関わりを意識してみましょう。

もし、そうした状態が続いたり、他の気になるサインが見られたりする場合は、一人で抱え込まず、地域包括支援センターやかかりつけ医などの専門機関に相談することをためらわないでください。

親御さんが穏やかな気持ちで日々を送れるよう、家族としてできるサポートを探しながら、ご自身の心身の健康も大切にしてください。「こころの晴れ間」は、皆さんと親御さんの心身の健康を応援しています。