高齢の親とのオンライン通話・電話、話し方や内容の変化に気づくサインと家族のサポート
高齢の親御さんと離れて暮らすご家族にとって、電話やオンラインでのコミュニケーションは大切なつながりです。顔を見て話したり、声を聞いたりすることで、親御さんの日常の様子を感じ取ることができます。
しかし、会話の内容や話し方に以前と違う変化を感じることはありませんか。それは、親御さんの心や体に何らかのサインが隠されている可能性も考えられます。忙しい日々の中で、親御さんのわずかな変化に気づくことは難しいかもしれませんが、早期に気づき、適切に対応することで、親御さんの心身の健康維持につながることがあります。
この記事では、高齢の親御さんとの電話やオンラインでの会話で見られる変化から、どのような心のサインが読み取れるのか、そして、ご家族としてどのように声かけをし、どのようなサポートができるのかについてお伝えします。
会話の変化に気づくサイン
親御さんの心の状態は、電話やオンラインでの会話の中に表れることがあります。日頃から意識しておくと良い、会話の変化に関する具体的なサインをいくつかご紹介します。
話し方や声のトーンの変化
- 声に元気がなく、沈んでいるように聞こえる: 以前は明るい声だったのに、最近は覇気がなく、沈んだ声で話すことが増えた。
- 話し方が早口になったり、逆にとてもゆっくりになったりする: 不自然な速さで話したり、言葉に詰まることが増えたりする。
- 同じ話を繰り返す、または話の辻褄が合わない: ついさっき話したことをもう一度話したり、話題が飛んで話の内容が理解しにくくなったりする。
- 不自然に明るく振る舞う: 元気がない様子を隠そうとしているかのように、無理に明るく振る舞っているように感じられる。
- 考えがまとまらず、言葉が出てきにくい: 会話の途中で言葉に詰まったり、考えを整理するのに時間がかかっている様子が見られる。
会話内容の変化
- ネガティブな内容が増える: 不満や愚痴が多くなったり、将来への不安や諦めのような発言が増えたりする。
- 特定の話題(病気、近所の出来事など)に過度にこだわる: 同じ病気や特定の人物についての話を執拗に繰り返したり、被害的な内容を訴えたりする。
- 以前は楽しんでいた趣味や活動の話をしなくなる: 好きだったことについて話さなくなったり、「もう興味がない」「やる気がしない」といった発言が増えたりする。
- 現実離れした内容を話す: 事実と異なる内容を真剣に話したり、根拠のない思い込みを口にしたりする。
- 感謝や喜びの感情表現が減る: 以前はよく感謝の言葉を口にしていたのに、そういった発言が少なくなった。
- 家族や友人との交流について話さなくなる: 近所の人との交流や友人からの連絡など、人とのつながりについての話題を避けるようになる。
コミュニケーション態度の変化
- 電話に出る回数が減る、または折り返しが遅れる: 以前はすぐに電話に出ていたのに、繋がりにくくなった。
- 電話やオンライン通話を早く切りたがる: 短時間で会話を終えようとする様子が見られる。
- オンライン通話を嫌がるようになる: 設定が面倒、顔を見られたくないなどの理由で、オンライン通話を避けるようになる。
- 逆に、過度に頻繁に連絡を求めてくる: 寂しさからか、必要以上に連絡を求めてくるようになる。
これらのサインは、単なる一時的なものかもしれませんし、年齢による変化の一部である場合もあります。しかし、いくつかのサインが同時に見られたり、以前と比べて明らかな変化が続いたりする場合は、注意深く見守ることが大切です。
これらの変化が示す可能性のある心のサイン
会話に見られる変化は、様々な心の状態や問題を示唆している可能性があります。
- 抑うつ状態や不安: 声に元気がなかったり、ネガティブな話が増えたりするのは、抑うつ状態や強い不安を抱えているサインかもしれません。意欲の低下や不眠なども伴うことがあります。
- 認知機能の低下: 同じ話を繰り返す、話の辻褄が合わない、言葉が出てきにくいといった変化は、認知症の初期症状や軽度認知障害の可能性も考えられます。
- 孤独感や社会的孤立: 人との交流について話さなくなる、頻繁に連絡を求めてくるといった態度は、孤独を感じているサインかもしれません。
- 被害妄想やせん妄: 事実と異なる内容を真剣に話したり、被害的な訴えが増えたりする場合は、精神的な不調やせん妄の可能性も考慮する必要があります。
- 体調不良が背景にある場合: 体調が悪いと、声に元気がなくなったり、会話に集中できなかったりすることがあります。特定の症状を訴えなくても、不調が会話の様子に影響していることもあります。
これらの可能性は専門家による判断が必要です。ご家族が自己判断で決めつけるのではなく、「もしかしたら何か変化があるのかもしれない」という視点を持つことが大切です。
声かけや接し方のヒント
親御さんの変化に気づいても、「どう声をかけたら良いか分からない」と悩む方もいらっしゃるでしょう。大切なのは、頭ごなしに否定したり、問いただしたりせず、親御さんの気持ちに寄り添う姿勢です。
- 変化を否定せず、受け止める: 「また同じ話?」などと遮らず、「そうだったのですね」「そう感じるのですね」と一度受け止めます。
- 傾聴の姿勢で話を聞く: 親御さんの話を途中で遮らず、じっくりと耳を傾けます。相槌を打ったり、共感する言葉を伝えたりすることで、話しやすい雰囲気を作ります。
- 具体的な状況を優しく尋ねる: 「最近、少し元気がないように聞こえるけど、何かあった?」「〇〇について、最近よく話すね」など、具体的に気づいた点を伝え、優しく尋ねてみます。ただし、問い詰めたり、原因を特定しようとしすぎたりしないように注意しましょう。
- すぐに解決しようとしない: 親御さんが不安や不満を話した場合でも、すぐに解決策を提示する必要はありません。「聞いてもらえた」と感じるだけで安心することがあります。
- 専門家への相談を促す場合の言い方: もし専門家への相談が必要だと感じたら、「一度お医者さんに相談してみると安心できるかもしれないね」「地域の相談窓口に話を聞いてもらうのもいいかもしれないよ」など、安心や助けになることを強調して提案してみましょう。
家族としてできる具体的なサポート
離れて暮らしていても、ご家族ができるサポートはたくさんあります。
- 定期的な連絡頻度の確保: 毎日短時間でも良いので、決まった時間に電話をするなど、定期的な連絡を心がけましょう。親御さんも安心して待つことができます。
- 共通の話題を見つける: テレビ番組や新聞記事、お互いの最近の出来事など、一緒に話せる共通の話題があると会話が弾みます。
- 可能であれば直接会う機会を作る: 電話やオンラインだけでなく、実際に会って顔色や様子を見ることは非常に重要です。難しい場合は、地域の親戚や知人に協力を依頼することも検討します。
- 親御さんの状況を共有する: 兄弟姉妹や他の家族と、親御さんの最近の様子について情報を共有し、協力して見守る体制を作ることも有効です。
- 地域資源の情報収集: 親御さんがお住まいの地域の地域包括支援センターや社会福祉協議会など、相談できる窓口や利用できるサービスについて調べておくと安心です。
- 自身の情報収集と心の準備: 高齢者の心の変化や、認知症などに関する基本的な知識を身につけておくことも大切です。また、ご自身の心身の負担にも気を配りましょう。
専門家への相談を検討するタイミングと相談先
会話の変化に加え、生活習慣や体調に明らかな変化が見られたり、ご家族だけで抱え込むのが難しくなってきたと感じたりする場合は、専門家への相談を検討するタイミングかもしれません。
- どのような変化が見られたら相談を考えるべきか:
- 以前と比べて明らかに意欲が低下し、何もする気が起きない様子が続いている。
- 不眠や食欲不振など、体調の変化を伴っている。
- 被害的な訴えが頻繁になり、訂正が難しい。
- 同じ話を繰り返しすぎて、日常生活に支障が出ている。
- 自身の安全に関わるような言動が見られる。
- ご家族の負担が大きく、どう対応して良いか分からない。
- 主な相談先:
- 地域包括支援センター: 高齢者の生活全般に関する相談を受け付けている地域の窓口です。保健師や社会福祉士などの専門職が対応してくれます。まずはここに連絡してみるのがおすすめです。
- かかりつけ医: 親御さんの普段の健康状態を知っている医師に相談してみましょう。必要に応じて専門の医療機関を紹介してくれます。
- 精神科・心療内科: 気分の落ち込みや不安など、精神的な症状が疑われる場合に専門的な診断や治療が受けられます。高齢者の心の問題に詳しい医師を選ぶと良いでしょう。
- 認知症疾患医療センター: 認知症の専門的な診断や治療、相談ができる機関です。物忘れなどの症状が気になる場合に相談できます。
相談する際には、いつ頃からどのような変化が見られるようになったか、その頻度や具体的なエピソードなどをまとめておくと、状況を伝えやすくなります。
まとめ
離れて暮らす高齢の親御さんのわずかな変化に気づくことは、簡単なことではありません。しかし、日々の電話やオンラインでの会話の中に隠されたサインを意識し、傾聴の姿勢で寄り添うことは、親御さんの心の健康を守る第一歩となります。
もし気になる変化が見られたら、一人で抱え込まず、まずは親御さんの気持ちを受け止めることから始めましょう。そして、必要に応じて地域包括支援センターなどの専門機関に相談することもためらわないでください。ご家族自身の心身の健康にも気を配りながら、できる範囲でのサポートを続けていくことが大切です。
この記事が、親御さんの心の健康を気遣う皆様にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。