離れて暮らす親がテレビばかり見るようになったら?隠れた心のサインと家族ができること
離れて暮らす親のテレビ視聴が増えたら
遠方に住む親御さんとの電話やオンラインでの会話の中で、「最近、家にいるときはいつもテレビをつけているみたい」「テレビを見ている時間が長くなったようだ」と感じることはありませんか。一見、単なる時間の過ごし方のように思える変化ですが、高齢の親御さんのメンタルヘルスや体調に隠れたサインである可能性も考えられます。
特に、これまで他の趣味や活動を楽しんでいた親御さんが、急にテレビばかり見るようになった場合は、少し注意深く見守る必要があるかもしれません。
この記事では、高齢の親御さんのテレビ視聴が増えることの背景にある可能性のある心のサインや体調の変化、そしてそれに気づいた家族ができることについてご紹介します。
テレビ視聴が増える背景にある可能性のあるサイン
高齢の親御さんのテレビ視聴が増えることには、いくつかの背景が考えられます。単に好きな番組が増えた、目が悪くなり他のことがしにくくなった、といった理由の場合もありますが、メンタルヘルスや体調に関連するサインの可能性もあります。
1. 意欲や関心の低下
これまで積極的に行っていた趣味や外出、友人との交流などへの関心が薄れ、活動に対する意欲が低下している可能性があります。その結果、手軽に時間を潰せるテレビに頼る時間が増えているのかもしれません。これは、抑うつ傾向や気力の低下の一つの表れである可能性があります。
2. 孤独感や社会的孤立
配偶者との死別、友人の減少、身体的な理由による外出機会の減少などにより、孤独を感じやすくなっている場合があります。人とのつながりが減り、会話する相手がいない状況で、テレビが話し相手代わりになったり、社会との唯一の接点になったりしているのかもしれません。
3. 認知機能の変化
加齢に伴う認知機能の変化により、複雑な作業や新しいことを理解・習得することが難しくなり、これまで楽しんでいた活動が億劫になっている可能性があります。その結果、受動的に情報を受け取れるテレビに多くの時間を費やすようになることも考えられます。
4. 体調不良や身体的な不調
疲れやすくなった、身体のどこかに痛みがある、といった体調不良が原因で、外出や他の活動が難しくなり、結果的に家でテレビを見て過ごす時間が増えていることも考えられます。
5. 感情の起伏の低下
感情の動きが乏しくなり、何か特定のことに強い興味を持つことが少なくなっている場合、刺激を求めて次々とチャンネルを変えたり、内容を深く理解せず漫然とテレビを見続けたりすることがあります。
これらのサインが単独で現れることもありますが、複数組み合わさって見られることもあります。
離れて暮らす家族ができる気づきのヒント
遠方に暮らしていると、親御さんの日常の細かな変化に気づくのは難しいものです。しかし、電話やオンラインツール、時々の帰省などを通して、気づきのヒントを得ることができます。
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電話やオンラインでの会話:
- 声のトーンや話し方(以前より暗くなった、元気がない、早口、遅いなど)
- 会話の内容(テレビ番組の話ばかりする、特定の話題に固執する、同じ話を繰り返す、質問への応答が曖昧)
- 会話中のテレビの音量や頻繁な中断
- 「今日は何してたの?」という問いかけに対する返答(「ずっとテレビ見てた」が続くか)
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帰省時の様子:
- 部屋の様子(テレビが長時間つけっぱなしになっているか、他の趣味の道具が使われていないか)
- 親御さんの身だしなみや表情
- 他の活動(散歩、買い物、地域の集まりなど)への関心度
- 友人や近所の方との交流の様子
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親戚や近所の人からの情報:
- 可能であれば、近隣に住む親戚や親御さんの友人などから、日常の様子について情報共有をお願いしてみることも有効です。
親への適切な声かけ・接し方
親御さんのテレビ視聴が増えていることに気づいても、頭ごなしに「テレビばかり見ていないで!」と指摘したり、一方的に否定したりすることは、親御さんの心を閉ざしてしまう可能性があります。心配している気持ちを伝えることが大切です。
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穏やかに、心配している気持ちを伝える:
- 「最近、テレビをよく見ているみたいだけど、何か面白い番組でもあるの?」
- 「以前はよく〇〇(趣味)してたけど、最近はどう?」「どこか体調でも悪いの?」
- 「たまには外の空気を吸いに散歩でもどう?」など、選択肢を優しく提示する。
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一緒にテレビを見る時間を共有する:
- 電話やオンラインで、同じ番組について話したり、一緒に画面を見たりする時間を持つことで、親御さんの孤独感を和らげることができます。
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テレビ以外の話題も振ってみる:
- 過去の楽しい思い出、共通の知人の話、家族の近況など、テレビ以外の話題で会話を弾ませてみましょう。
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無理強いはしない:
- すぐに変化が見られなくても焦らず、根気強く関わることが重要です。親御さんのペースを尊重しましょう。
専門家への相談を検討するタイミングと相談先
テレビ視聴の増加だけでなく、以下のような他のサインも同時に見られる場合は、専門家への相談を検討する良いタイミングかもしれません。
- 食欲不振や睡眠の変化が続いている
- 以前よりも明らかに元気がなく、落ち込んでいる様子が見られる
- 身だしなみを気にしなくなった、部屋の片付けができていない
- 同じことを繰り返し話す、物忘れが目立つようになった
- 会話が難しくなった、感情の起伏が乏しい
- 明らかに身体の不調を訴えることが増えた
相談先
- 地域包括支援センター: 高齢者の生活全般に関する相談を受け付けている地域の総合相談窓口です。保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーなどが連携して対応してくれます。まずはここに相談してみるのがおすすめです。
- かかりつけ医: 身体的な不調が隠れている可能性もあります。日頃から親御さんの状態を把握しているかかりつけ医に相談してみましょう。必要に応じて専門医を紹介してもらうことも可能です。
- 精神科・心療内科: 抑うつやその他の精神的な不調が疑われる場合は、精神科や心療内科の受診を検討します。高齢者の精神医療に詳しい医師がいるか事前に確認すると良いでしょう。
- 市区町村の高齢福祉担当課: 地域の高齢者向けのサービス(デイサービス、配食サービスなど)に関する情報を提供してくれます。
家族としてできる具体的なサポート
親御さんのテレビ視聴が増えた背景にメンタルヘルスや体調の問題がある場合、家族としてできるサポートは多岐にわたります。
- 定期的な連絡と傾聴: こまめに連絡を取り、親御さんの話をじっくり聞く時間を持つことが大切です。親御さんが安心して話せる関係性を保ちましょう。
- 可能な範囲での訪問: 直接会って様子を確認し、一緒に時間を過ごすことで、親御さんの気分転換になります。
- 地域サービスの検討: 地域の高齢者向けのサロン活動、デイサービス、配食サービス、見守りサービスなどを利用することで、親御さんの社会とのつながりを増やしたり、生活をサポートしたりすることができます。地域包括支援センターに相談してみましょう。
- 親の興味関心を引き出す働きかけ: 昔の写真を見返したり、簡単な脳トレを一緒にしたり、親御さんが無理なくできる簡単な家事をお願いしたりするなど、テレビ以外の活動に関心を持ってもらうような働きかけを試みます。
- 家族自身の休息も大切に: 親御さんのことが心配で、ご自身が疲弊してしまわないように、適度に休息を取り、必要であれば他の家族や相談機関に助けを求めることも重要です。
まとめ
高齢の親御さんのテレビ視聴が増えたことは、単なる生活習慣の変化ではなく、意欲の低下、孤独感、認知機能の変化、体調不良など、様々な隠れたサインである可能性があります。離れて暮らす家族としては、電話やオンライン、帰省の機会を通じて親御さんの様子を注意深く観察し、心配な変化に気づくことが大切です。
変化に気づいたら、穏やかに親御さんの気持ちに寄り添いながら声をかけ、必要に応じて地域包括支援センターやかかりつけ医などの専門機関に相談することを検討しましょう。家族の温かい関わりと適切なサポート、そして専門家の助けを借りることで、親御さんの心の健康を支えることができます。
この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療を推奨するものではありません。親御さんの状態についてご心配な場合は、必ず医療機関や専門家にご相談ください。