離れて暮らす親が「家にこもりがち」になったら?気づきのサインと家族の対応
離れて暮らす親が「家にこもりがち」に。家族ができることとは
遠方に住む高齢の親御さんから、最近あまり外出していない、友人と会う回数が減ったといった話を聞くことはありませんか?あるいは、電話やオンラインでの会話で、以前より活動的でない様子が気になっている方もいらっしゃるかもしれません。
高齢者が家にこもりがちになる背景には、様々な要因が考えられます。単に外出が億劫になっただけの場合もあれば、心身の変化が影響していることもあります。特に離れて暮らしている場合、親御さんの普段の様子を把握するのは難しく、不安を感じることもあるでしょう。
この記事では、高齢の親御さんが「家にこもりがち」になった際に考えられること、家族が気づくためのサイン、そしてどのように接し、サポートできるのかについて解説します。
なぜ高齢になると家にこもりがちになるのか
高齢者が以前より外出や人との交流を避けるようになる原因は一つではありません。複数の要因が複雑に絡み合っていることもあります。
主な要因として、以下のようなものが考えられます。
- 身体的な衰えや疾患: 足腰が弱くなる、疲れやすくなる、持病が悪化するなど、身体的な理由で外出が負担になることがあります。視力や聴力の低下も、外出や人とのコミュニケーションを難しくする要因となりえます。
- 認知機能の変化: 認知症の初期症状として、新しい場所に行くのをためらったり、以前楽しんでいた活動への興味を失ったりすることがあります。
- 社会とのつながりの希薄化: 友人や知人との別れ、地域のコミュニティからの孤立などにより、外出する機会や理由が減ることがあります。
- 孤独感や不安: 一人暮らしや日中の孤独、将来への漠然とした不安などが、家に閉じこもる気持ちにつながることがあります。
- 抑うつ状態: 気分の落ち込み、興味や関心の喪失、やる気の低下は、家にこもりがちになる典型的なサインです。身体的な不調として現れることもあります。
- 外出に関する不安: 転倒への恐れ、交通手段への不安、世間体への配慮なども、外出を控える理由となることがあります。
これらの要因が単独で、あるいは複合的に影響し合い、行動の変化として現れることがあります。
「家にこもりがち」に気づくためのサイン
離れて暮らす中で、親御さんが「家にこもりがち」になっていることに気づくためには、普段のコミュニケーションの中にヒントが隠されています。
電話やオンラインでの会話で、以下のようなサインがないか意識してみてください。
- 会話の内容の変化:
- 最近会った人、出かけた場所、参加した活動についての話題が減った。
- 「ずっと家にいた」「特に何もしていない」という返答が増えた。
- 以前は楽しみにしていた趣味や活動について話さなくなった。
- 口数が減り、覇気が感じられない。
- 生活リズムの変化:
- 電話に出る時間帯が変わった(以前は活動していた時間帯に出ないなど)。
- 食事や睡眠のリズムが乱れている様子が見られる。
- 物の変化:
- 以前よく使っていた外出用のカバンや靴が使われた形跡がない。
- 読みかけの本や新聞が同じページで止まっている期間が長い(オンラインでの会話などで部屋の様子が見える場合)。
- 声の調子:
- 声に張りがなく、沈んでいるように聞こえる。
これらのサインに一つでも気づいたら、すぐに深刻な問題だと決めつける必要はありませんが、「いつもと違う」変化として注意を払うことが大切です。
家族ができること:やさしい声かけと寄り添い方
親御さんが家にこもりがちになっているかもしれないと感じたとき、どのように声をかけ、接すれば良いのでしょうか。
最も大切なのは、頭ごなしに否定したり、一方的に外出を促したりしないことです。親御さんの気持ちに寄り添う姿勢が重要です。
- 共感的な姿勢で話を聞く: 「最近あまり外出してないみたいだけど、何かあったの?」「なんだか元気がないように聞こえるけど、大丈夫?」など、心配している気持ちを伝えつつ、まずは親御さんの話を聞くことから始めましょう。理由を問い詰めるのではなく、「そうなんだね」「何かできることはある?」といった共感や気遣いの言葉を添えると、親御さんも話しやすくなるかもしれません。
- 無理強いはしない: 「もっと外に出なきゃダメだよ」「みんな外に出てるよ」といった、親御さんを追い詰めるような言葉は避けましょう。外出や交流を避けるには、親御さんなりの理由があるはずです。その気持ちを理解しようと努めることが大切です。
- 小さなきっかけを提案する: いきなり遠出や大勢の中への参加を勧めるのではなく、負担にならない小さな一歩を提案してみましょう。「家の周りを少し散歩してみない?」「近所のパン屋さんまで一緒に行ってみようか?」など、親御さんの興味や体調に合わせた具体的な誘いが効果的です。
- 共通の話題や興味を探す: 昔の話や家族の近況、テレビで見たニュースなど、共通の話題で会話を弾ませることを心がけましょう。親御さんが以前興味を持っていたことや、これからやってみたいことについて優しく尋ねてみるのも良いでしょう。
- 電話やオンラインでの交流を増やす: 直接会えない場合でも、定期的に電話をかけたり、オンラインで顔を見ながら話したりする時間を持ちましょう。家族の声を聞くだけで安心したり、孤独感が和らいだりすることがあります。無理のない範囲で、孫と話す機会を作るのも喜ばれるかもしれません。
専門家への相談を考えるタイミング
家族の働きかけだけでは状況が変わらない場合や、以下のようなサインが見られる場合は、専門家への相談を検討する時期かもしれません。
- 「家にこもりがち」な状態が長く続いている。
- 以前は楽しんでいたことへの関心や意欲が全く見られない。
- 食欲不振や不眠、強い疲労感を伴っている。
- 会話の中で、将来を悲観するような言葉や、自分を責めるような発言が増えた。
- 明らかに気分の落ち込みや不安が強く見られる。
- 家族としてどのように対応すれば良いか、迷いや負担が大きくなっている。
これらのサインは、うつ病などの精神疾患や、認知症の進行、あるいは身体的な疾患が背景にある可能性を示唆しています。専門家の視点から適切なアドバイスや支援を受けることが、親御さんにとっても家族にとっても助けになります。
どこに相談すれば良いか
高齢者の心身の健康や生活全般に関する相談先はいくつかあります。状況に応じて適切な窓口を選びましょう。
- 地域包括支援センター: 高齢者の暮らしを地域で支える中核機関です。保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーなどが配置されており、心身の健康、介護、医療、生活に関する様々な相談にワンストップで対応しています。まずはここに相談してみるのが良いでしょう。親御さんの状態や、利用できるサービスについてのアドバイスを得られます。
- かかりつけ医: 親御さんが普段から通っている医療機関があれば、まずかかりつけ医に相談するのも有効です。身体的な不調が原因の可能性もありますし、医師から専門医への紹介を受けることも可能です。
- 精神科・心療内科: うつ病や不安障害など、精神的な不調が強く疑われる場合は、精神科や心療内科の受診を検討します。高齢者の精神疾患に詳しい医師がいるか事前に確認すると良いでしょう。
- 市区町村の高齢者福祉担当窓口: 各自治体の高齢者福祉課や保健センターなどでも相談を受け付けています。利用できる公的なサービスや地域の情報を提供してもらえます。
相談する際は、親御さんの最近の様子(いつ頃から、どのようなサインが見られるかなど)を具体的に伝えられるように準備しておくと良いでしょう。親御さん本人が相談に行くのをためらう場合は、まずはご家族だけで相談することも可能です。
家族自身の心のケアも大切に
離れて暮らす親御さんのことが心配で、どうにか力になりたいと思う一方で、ご自身の仕事や家庭があり、時間や精神的な負担を感じることもあるかもしれません。
親御さんのサポートは大切ですが、ご自身の心身の健康も同様に重要です。一人で抱え込まず、兄弟姉妹や親戚と協力したり、地域の相談窓口や専門家の力を借りたりすることを検討してください。家族自身が心身ともに健康でいることが、結果として親御さんを長く、安定的にサポートすることにつながります。
まとめ
高齢の親御さんが「家にこもりがち」になるのは、加齢に伴う自然な変化の側面もありつつ、心身の不調や社会からの孤立のサインである可能性も含まれています。離れて暮らす中でその変化に気づくのは難しいこともありますが、電話やオンラインでの定期的な会話の中にヒントがあるかもしれません。
大切なのは、変化に気づいたら焦らず、親御さんの気持ちに寄り添いながら、ゆっくりと関わっていくことです。一方的に解決策を押し付けるのではなく、親御さんのペースに合わせて、小さな一歩を一緒に踏み出すことを目指しましょう。
家族だけで抱え込まず、必要に応じて地域包括支援センターなど専門機関の力を借りることも重要です。親御さんにとって「こころの晴れ間」が広がるよう、やさしい眼差しで見守り、寄り添っていくことから始めてみませんか。