親のメンタルヘルスが心配になったら?声かけのコツと家族ができるサポート
親の心の変化に気づいたら、どうすれば良いのでしょうか
離れて暮らしていても、あるいは身近にいても、高齢の親御さんの「いつもと違う」様子に気づくと、ご家族は心配になるものです。会話が減ったり、以前のように楽しそうではなかったり、少し元気がないように見えたり。こうした変化が、もしかしたらメンタルヘルスの不調のサインかもしれないと漠然とした不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、親御さんの心の状態が気になったときに、ご家族がどのように関わっていくことができるのか、特に「声かけ」の仕方や具体的な「サポート」の方法、そして専門機関への「相談」についてお伝えします。親御さんが穏やかに日々を過ごせるよう、ご家族としてできることから始めてみましょう。
なぜ早期の気づきと声かけが大切なのでしょうか
高齢期は、身体的な変化に加え、社会的な役割の変化(退職など)、親しい人との別れ、生活環境の変化など、様々なライフイベントを経験しやすい時期です。こうした変化が、心のバランスを崩すきっかけとなることがあります。
例えば、気分の落ち込みや意欲の低下といったサインは、単なる加齢によるものと見過ごされがちですが、うつ病などのメンタルヘルスの不調の可能性も考えられます。早期に不調に気づき、適切な声かけやサポートを行うことで、親御さんの孤立を防ぎ、症状の悪化を防ぎ、より早く回復へ向かうことができます。
具体的な声かけのコツ
親御さんの変化に気づいたとき、どのように声をかけたら良いか迷うかもしれません。ここで大切なのは、責めるのではなく、寄り添う姿勢です。
- 変化に気づいたことを穏やかに伝える: 「最近、少し元気がないように見えるけど、何かあったの?」「前は楽しそうに話してくれたのに、最近は口数が減ったかなと思って」など、具体的に気づいた様子を伝えつつ、心配している気持ちを伝えます。「どうしたの!」と問い詰めたり、「考えすぎだよ」「気にしなくていい」と安易に励ましたりするのは避けましょう。
- 「聴くこと」に重点を置く: 親御さんの話を遮らず、最後まで聞く姿勢が大切です。「うんうん」「そうなんだね」と相槌を打ちながら、共感を示します。話したくないようであれば、無理強いはしません。「話したくなったら、いつでも聞くよ」と伝え、安心して話せる環境があることを示すだけでも安心につながります。
- 否定や批判をしない: 親御さんの感じていること、考えていることを否定したり、「それは違う」「間違っている」と批判したりしてはいけません。つらい気持ちや不安な気持ちを受け止め、「そう感じているんだね」と寄り添います。
- 専門家への相談を促す際の言葉: 「もしよければ、お医者さんや専門家の方に相談してみるのもいいかもしれないね。私も一緒に話を聞きに行こうか?」など、選択肢の一つとして提案し、一人ではないことを伝えます。受診そのものへの抵抗がある場合は、「体の他のことで受診するついでに、ちょっと相談してみる?」といった声かけも有効な場合があります。
家族ができる具体的なサポート
声かけに加え、日々の生活の中でご家族ができるサポートはたくさんあります。
- 一緒に過ごす時間を作る: 短時間でも良いので、一緒に食事をしたり、散歩をしたり、共通の話題で話をしたりする時間を持つことが大切です。物理的な距離がある場合は、定期的に電話やオンラインで顔を見て話す機会を設けるだけでも、孤立感の軽減につながります。
- 趣味や外出を促す: 以前楽しんでいた趣味や活動に興味を示さなくなっている場合でも、「一緒に〇〇に行ってみない?」「これ、一緒にやってみようよ」と誘ってみることで、外に出るきっかけや、楽しい時間を持つきっかけになります。ただし、無理強いはせず、本人の気持ちを尊重することが重要です。
- 生活リズムを整えるサポート: 食事、睡眠、適度な運動はメンタルヘルスの維持に不可欠です。バランスの取れた食事を一緒に準備したり、一緒に軽い体操をしたり、規則正しい生活を送れるよう緩やかにサポートしたりします。
- 小さな変化や努力を認める: 少しでも元気になった様子や、何かをしようと努力したことに対し、「今日は元気そうだね」「〇〇ができてすごいね」など、ポジティブな言葉で伝えることで、親御さんの自信につながります。
専門家への相談を検討するタイミングと相談先
ご家族だけで抱え込まず、必要に応じて専門家の力を借りることも非常に大切です。
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どのような時に相談を検討するか:
- 気分の落ち込みや不安感が続き、日常生活に支障が出ている(食欲がない、眠れない、何もする気が起きないなど)。
- 以前は楽しんでいたことに関心を示さなくなった。
- ネガティブな発言が増えた、自分を責めるようになった。
- 体の不調を訴えるが増えたが、検査では特に異常がない。
- ご家族の声かけやサポートだけでは改善が見られない。
- ご家族自身がどう対応して良いか分からず、困っている。
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主な相談先:
- 地域包括支援センター: 高齢者の生活全般に関する相談を受け付けており、専門の職員(保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員など)が対応してくれます。メンタルヘルスの問題についても相談でき、適切な機関へつないでくれることがあります。まずはこちらに連絡してみるのも良いでしょう。
- かかりつけ医: 体の不調を訴える場合、まずはかかりつけ医に相談してみましょう。体の病気が隠れていないかを確認するとともに、メンタルヘルスの専門医を紹介してくれることもあります。
- 精神科・心療内科: 精神科や心療内科の専門医は、うつ病などのメンタル疾患の診断や治療を行います。高齢者の心の専門家がいる医療機関もあります。
- 精神保健福祉センター: 都道府県や政令指定都市に設置されており、心の健康に関する専門的な相談支援を行っています。家族からの相談も可能です。
専門機関への相談は、早ければ早いほど対応の選択肢も増えます。ご家族だけで抱え込まず、まずは一歩踏み出してみましょう。
家族自身のケアも大切です
親御さんのメンタルヘルスをサポートするご家族も、心身ともに疲れてしまうことがあります。ご自身の健康も大切にしてください。
- 一人で抱え込まない: パートナーや兄弟、信頼できる友人などに話を聞いてもらうだけでも気持ちが楽になります。
- 相談先を利用する: 先述の相談機関は、ご家族自身の悩みを聞いてくれる場合もあります。また、ご家族向けの相談窓口を設けている機関もあります。
- 自分の時間を持つ: 趣味や休息など、ご自身がリフレッシュできる時間を持つことも重要です。
まとめ
親御さんのメンタルヘルスの変化に気づいたときは、ご家族も不安を感じるものです。しかし、焦る必要はありません。まずは親御さんの変化に寄り添い、今回ご紹介したような声かけのコツを参考に、できることからサポートを始めてみてください。
そして、ご家族だけで抱え込まず、必要であれば地域包括支援センターやかかりつけ医など、専門機関に相談することも考えてみましょう。専門家のアドバイスを得ることで、より適切な対応が見つかることがあります。
親御さんとご家族が、共に穏やかな日々を過ごせるよう、一歩ずつ進んでいきましょう。